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BrBa ウォルター×ジェシー、マイク×ジェシー A5 140P あらすじ…ジェシーはウォルターからマイクを見張って欲しいと頼まれるが…。
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クリスタル・メスを作って、売って、不倫相手とセックスする。 絵に描いたような堕落した生活──のようだが、実際はジェシーの今までの人生の中で一番規則正しく生活していた。 起きるのは清潔な部屋。素面の頭で迎える朝は少しだけ憂鬱だ。 「おはよう」 と、一緒に寝ていた相手に言われる。 「……おはよう」 挨拶を交わして、相手の頬にキスをした。肌に触れると昨夜の行為を少しだけ思い出す。 昨夜の続きをしたいな……などという考えに後ろ髪を引かれつつ、シャワーに向かう。 朝食は適当に済ます。コーヒーだけでもいいし、冷凍のワッフルを暖めてもいい。 以前の、スナック菓子だけで済ませていたころに比べれば、かなりまともだ。 そして、車で通勤。 向かうのは荒野の中のクリーニング工場だ。地下には雇い主が用意した最高のメス・ラボがある。 ドアを開けて眼下に広がるそれを眺めた。 ここで働いてはいるが、誇らしく思ったりするのは間違いだ。 これは自分の為に用意された施設ではない。人の目をごまかすための凝った入り口も、空調設備も、巨大な攪拌機も、今握っている手すりでさえ、自分のものではなく──ウォルター・ホワイトのために存在してる。 ウォルターはジェシーよりも先に螺旋階段を下り、ロッカーの前で着替えている。 その様子を見ながら、ジェシーも階段を下りた。 「納品予定日より、ずいぶん早く出来たな。明後日は休めそうだ」 と、ウォルターが黄色い防護服を着ながら言う。 「明後日? 明日は休めねえの?」 「明日は掃除だ」 最悪、と口走りそうになってジェシーは止めた。掃除のグチをこぼせば、ウォルターから長々と『掃除がいかに重要か』について説教されることになる。何度もこの失敗を繰り返し、さすがにジェシーも学んでいた。 掃除は面倒な上に体力を消耗する最低の作業だが、このラボで働ける幸運を思えば我慢できる。 本来ここで働くべき助手を追い払い、ジェシーを入れてくれたのはウォルターだった。 依存症の更生施設から戻って来た後、ジェシーは彼を頼らず、一人でメスを作り、悪友二人と売り歩こうと思っていた。が、ウォルターとの関係が変わり、結果、このラボに勤める事になった。ただの教師と生徒、それから薬製造のパートナー……気付いたら、不倫関係だ。 妻に追い出され気落ちしているウォルターに関係を迫ったのは、今考えても無茶だったと思う。彼が受け入れてくれたから良かったものの、拒絶されていたら、どうなっていたか……。 軽蔑され、無視され、傷ついて、今頃、また薬中に逆戻りだっただろう。 ジェシーも着替え終わるとマスクを片手に、先に作業を開始してるウォルターの元に近づいた。 目で合図をされる。ジェシーはうなずき、彼と一緒に袋を抱え上げ、材料を機材に流し込んだ。 ウォルターは神経質で、どんな作業も手を抜いたりしない。毎回飽きずに全く同じ動作を繰り返していた。 ジェシーはそれに文句を言うことはない。ウォルターの指示通りに動く。彼の慎重さに苛立つことがあっても、仕事に関してはウォルターが圧倒的に正しいと分かっている。 作業を一通り終えて、タイマーをセットし、後は時間が過ぎるのを待つだけ──という段階になり、二人は同時にマスクをはずした。 「コーヒーを入れよう」 と、ウォルターが言って、前の助手が残していった大げさなコーヒーメーカーをいじる。 ジェシーはイスに腰掛けて、その様子を眺めていた。 彼がメスを作るのと同じように神経質な様子でコーヒーを淹れている。そんな姿を見つめていられることに、幸せを感じた。 違法な仕事だが収入は安定してるし、好きな人とは一緒にいられる。今やほとんどウォルターの家に入り浸っていて、両親から騙すように買い取った自宅には帰ってない。 幸福感に浸っていると、コーヒーを淹れたマグを渡されて、さらに良い気分になった。 「そういえば、あの二人はどうしてる?」 と、ウォルターがコーヒーを飲みつつ言った。 「あの二人?」 「おまえの友達の……」 「ああ。バッジャーとスキニーピート?」 ウォルターは彼らと面識もあれば、一緒に仕事もしたことがあるのに名前を覚えない。「二人とも元気だよ」 「仕事は?」 「さあ……知らない。適当にやってるだろ。ああ、もしかして売人をしてるんじゃないかって心配してる?」 「いや、そういうわけじゃないが……」 「大丈夫。ガスの目に付くようなことはしてない」 そう答えたが、ウォルターの心配そうな表情は消えない。誤魔化すように持ち込んだ新聞を手に取って読み始めた。 ウォルターのこういう疑い深いところには本当に腹が立つ。いったい何時になったら、ジェシーの言うことを素直に受け取るようになるのか。 だけど、今やそんな性格も好きなところの一つだった。 今までの恋愛と違うところがあるとすれば──相手が同性というのはともかくとして──彼に夢中だという自覚があることだ。 いままでは誰かと付き合うと、ひたすら溺れる一方で、自分がどんな状態か分かってないことが多かった。が、なぜか今回は自分の様子を外側から見ることが出来ている。 自分はウォルターに惚れていて、彼からも愛されたいと願っていて、でも、それは叶っていないと知っている。 ウォルターは離婚届にサインしたと言うが妻に未練があり、時々家族を訪ねる。ジェシーには金の話をしにいくだけと言うけど、出かけるとき、彼は普段はしない身だしなみのチェックをする。剃っている頭を無駄になでつけ、髭を手入れし、下着も着替え、体臭まで気にする。 ジェシーには洗ってもないペニスを舐めさせることも躊躇しないくせに……。 まあ、それは俺も気にしてないけど……と、ジェシーはコーヒーを飲みながら、新聞を読むウォルターをちらりと盗み見る。 休憩時間はかなり長い。その間に休憩室で楽しいことでも、とジェシーは願うが、何度頼んでもウォルターは頷いてくれない。 なので、ただ視姦した。 思いが叶えられたのは家に戻ってから。 一緒に彼の家に入って、玄関付近で迫ってもやはり受け入れてはくれず、寝室に移動してだった。 少し、面倒でじれったい。でも、ジェシーはそんな関係が気に入っていた。 *** めずらしく自宅で寝ていると──バッジャーが駆け込んできた。 「ジェシー!」 「……なんだよ。いったい今何時だ……」 昨夜は家族に会いに行くとウォルターに言われ、仕方なく自宅に戻った。はっきり言って機嫌は良くない。肩をつかんで揺する遠慮のないバッジャーを殴りたいぐらいに。 「五時だ」 「五時……? 朝の? ふざけんなよ……眠らせろ」 と、枕を抱えて転がった。が、またバッジャーに肩を捕まれて仰向けにされる。 「んー……なんなんだよ……」 「起きろ。大事な話だ」 「だろうな。じゃなけりゃ、殴る」 寝るのは諦めて、身体を起こした。 顔を擦ってやっと目を開く。ベッドに腰掛けるバッジャーは彼にしては珍しく真剣な顔をしていた。 「何があった?」 「ブツと金を奪われた」 「……は?」 「昨日の夜、いつものようにスキニーと一緒に売ってたら……」 「待て」 と、ジェシーは遮った。「売ってただと? まさかまだ売人をやってるのか?」 「ああ。そうだよ」 「終わりだって言ったよな? もう俺は個人では薬を作れない。おまえたちも関わると危険だからってやめるって約束したよな?」 「そうだけど……前におまえからもらった薬がまだ余ってたから、これだけは売っちゃおうって……」 「何を勝手なことしてくれてんだ」 バッジャー達に渡したメスは、ラボに勤める前に作ったものだ。だけど、そんなことガスには関係ない。勝手に作って勝手に売った、そう判断するだろう。ジェシーだけではなく、ウォルターの立場も悪くなるかもしれない。 「勝手はおまえだろ?」 と、バッジャーが珍しく怒気を交えた声で言った。「俺たち三人でやろうって言い出したのはおまえだ。俺もスキニーもやめようとしてたのに、おまえが巻き込んだ。なのに、急に『俺は新しいラボで働くから、おまえらもやめろ』だなんて勝手すぎる。俺たちもこの商売をやる気だったのに」 「金が必要なら俺が出すって言っただろ」 「金のためだけじゃない。俺は好きなんだ、この仕事が」 「仕事?」 「そうだろ? 立派な仕事だよ。おまえが作ったブルーメスは人気がある。ほら──」 と、ポケットから一つ取り出した。 黒と青で髑髏がデザインされたパッケージにジェシーの造ったメスが包まれている。 「なんだ、これ」 「スキニーの知り合いにこういうの得意な奴がいてさ、頼んでデザインしてもらった」 「金かけたな」 「見かけも大事なんだ。おかげで倍の値段で売れるようになったぜ」 「そんなもんか……?」 ジェシーは裏表とパッケージを確認すると、バッジャーに返した。 「昨夜もそれを売ってたんだ。名前は忘れたけど、どっかの誰かのパーティーで……そしたら、怖い感じのおっさんがやってきて俺とスキニーから金とブツを奪っていった」 「強盗?」 「じゃない。奪うとき言われたんだ『このブツの権利はこっちにある』って。おまえたちが使っていいレシピじゃないとかなんとか……」 間違いなく、ガスの手下だ。 ジェシーは頭を抱えた。 「もう二度と商売はするなって言われた」 「だから言っただろ。危険なんだ。俺たちには想像も出来ない数の人間が関わってる。中には本当にヤバい奴もいるんだ。おまえとスキニーだけじゃない。俺だって危険になる」 「でも、おまえが働いてるとこの関係者なんだろ? だったら言っといてくれよ。持ってる分を売り切るまでだから見逃してくれって」 「あとどれぐらい余ってるんだ?」 「〇.一ポンドぐらい」 「〇.一か……」 ジェシーは顔を撫でて、考える。「だったら……車で州を出て、移動しながら売り抜いてこい。出来るだろ」 「無理じゃねえけど……」 「とにかく、この辺じゃだめだ。今度見つかったら殺されるぞ」 「盗られた金はどうなる?」 「あきらめろ。どうしても金が必要なら俺が出す」 「おまえの施しはいらねえよ」 そう言って、バッジャーが立ち上がった。 「待て。どうするつもりだ?」 「自分で解決する」 「自分で? だめだ」 「おまえはもう関係ない。口出しすんなよ!」 怒鳴ると出て行ってしまった。 *** ウォルターを見るだけで幸せな気分に浸れるはずが──今日はいくら彼を見つめていても、見つめられてもジェシーの気分は晴れない。 掃除にも集中出来ずどうしてもバッジャーとスキニーのことを考えてはため息が漏れた。 彼らがどうするつもりなのか。 売るのを諦めてくれるのが一番いいが、どうしても売りたいと言うのなら、近場は避けてもらいたい。 だが、今朝の様子だと馬鹿なこをしでかしそうだ。 ウォルターに相談することも考えたが、悩みの多い彼にこれ以上負担をかけたくない。 はあ、と今日何度目かのため息を吐きつつ、ファンを磨くブラシを動かした。 「どうした」 側を通りがかったウォルターが言った。「今日はやけに辛そうだな。体調でも悪いのか?」 「あんたよりかは元気だよ」 軽口にウォルターが眉を寄せたが、怒ってるわけじゃない。最近ウォルターは比較的穏やかだった。病状が落ち着いてるからだろう。嬉しいことだ。 「同じ格好で磨いてたら背中が痛くなった」 「適度に身体を動かせ」 そう言って、脚立を抱えて大きな機械の方へと向かった。 掃除の間中、何度かウォルターに言おうとしては思いとどまる、というのを繰り返して、結局言えないまま解散となった。 ウォルターを巻き込みたくない。 クビになるなら自分だけで充分だ。 *** 掃除が終わり、家に戻るまでの車でも、家に着いてからもバッジャーに電話をした。が、繋がらない。 「何してんだ、あいつ……」 いらいらして何度もかけ直す。直接家に行こうかと考えていると、玄関がかなり乱暴にノックされた。 開ければ、バッジャーとスキニーピートが転がるように入ってくる。二人でドアを閉めて厳重に鍵をかけた。 「おい、バッジャー。何度も電話したんだぞ。なんで出ない」 「追われてる」 青い顔でスキニーピートが言った。 「追われてる?」 うんうん、とバッジャーが頷く。 「今、いつもの場所で取引してたら、例のおっさんが声をかけてきて……逃げたら追ってきた。銃も持ってた」 不穏な単語にジェシーも焦りを感じた。 「まさか撃ってきたのか?」 「いいや。撃つぞと匂わせただけ。だけど……車に乗っても着いてきた」 「尾行されたのか?」 ジェシーは窓の外を確認した。怪しい車はないようだ。 「とにかく、ここにいろ。俺が何とかするから」 不安げな二人にそう言い、ジェシーは携帯をつかむととりあえずウォルターに電話した。が、出ない。 そうだ、今日は病院だった。携帯の電源は切っているのだろう。 ではどうしたらいい? ガスに直接連絡をする手段はない。ラボに戻って手下の誰かを捕まえて交渉するか。 迷っていると、またドアがノックされた。今度はやけに落ち着いた音だ。二人がびくっと反応した。彼らには静かにしてろとジェスチャーして、ジェシーはゆっくりとドアに近づく。まるでそれが見えていたかのようにドアの向こうから声がした。 「開けろ」 声に聞き覚えがある。その声を聞いた時の事は、良い思い出とは言い難いが──相手が誰か分かってまずは安心出来た。 「大丈夫だ」 と、二人に言ってからドアを開けた。 そこにはマイクが不機嫌そうな様子で立っていた。 マイクを指さしてバッジャーが「こいつだ! 俺たちを追いかけてきたのは!」と言った。 「安心しろ。知ってる奴だ」 な? とジェシーはマイクに語りかけた。 「覚えてるのか? 会ったのはおまえがクソみたいに玄関で丸まってた時だったが」 忘れるわけがない。自分の人生の中で最悪の日だった。マイクがあのとき来てくれて助かった。本当の意味で救われたわけではなかったが、感謝はしている。 あのときの様子からして、マイクは感情に任せて暴力を振るうなんてことはしないはずだ。話せば分かってくれる。 「あの二人を追ってきたんだろ?」 と、ジェシーはバッジャーとスキニーピートを指さした。「縄張りを荒らして悪かったよ。あれが俺が昔作ったヤツの余りなんだ。もう今後は売らない。約束する。だから見逃してやってくれ」 マイクがぎろりと二人を睨んだ。 「一度忠告した。が、その二人は無視してまた同じように売った。また今回も聞かなかったことにして明日には売り始めるんじゃないか」 「大丈夫。売る薬がなければもうやらない」 ジェシーは二人に近づいて手を差し出した。二人はあらゆるポケットから薬を取り出して手に乗せてくる。それをマイクに渡した。 「これで全部だ」 マイクはそれらをジャケットのポケットにしまい、ふんと鼻を鳴らした。まだ納得しないようなので、ジェシーは二人に誓わせる。 「もうやらないよな?」 「ああ、やらない。やらないよ」 「売り物もないしな」 二人が口々に言うと、マイクはふうと息を吐いた。 「わかった。だが、今度見つけたらその場で対処する。言い訳は聞かない」 台詞に二人が顔色をなくしたことを確かめると、マイクがドアに手をかけた。ジェシーも一緒に外に出る。隣の家の陰に、マイクのものらしき車が見えた。 「あのさ……マイク」 車に向かう彼に声をかけると、面倒そうに振り返った。「このことだけど、先生に言う?」 「ウォルターにか?」 「うん」 いいや、と頭を振った。 その返事にほっとすると、マイクに笑われた。 「悪さを知られると『先生』に居残り勉強でもさせられるのか?」 「そうじゃねえけど……裏切りだと思うかもしれないだろ。先生は怒らせると大変だから」 「今回のことはおまえの所為じゃない。だったら知られたってかまわないだろ」 「そうだけど……」 マイクが再び歩き出した。が、途中で振り返る。 「なあ、小僧」 「ん?」 「おまえはバカだが悪人じゃない」 「それって誉めてんの?」 「ラボはウォルターに任せて、おまえはやめた方がいい。今なら引き返せる」 頼りない友人二人を見たからか、突然何を言い出すかと思えば……年寄りのお節介だ。 「やめねえよ。本当は俺は雇ってもらえなかったんだ。それをなんとか雇ってもらえたのに、なんでやめなきゃならない」 「そうだな。確かに、あんなに金になる仕事も他にないからな」 「金のこともあるけど……」 ジェシーは本当のことが言えずに語尾を濁した。 ラボで働く一番の動機はウォルターと一緒にいられること。 最愛の人を失った──あの苦しみをもう二度と味わいたくない。これからはずっと好きな人のそばにいて、存在を感じていたいんだ。 「やりがいを感じてるのか?」 「まあな」 「バカなやつだ」 ふん、と笑って今度こそ車に乗り込むと去って行った。